40代会社員のちゃぴっとです。
高配当株分析シリーズ、今回は 「PBR1倍割れ × 高配当株」ランキング です。
前回は全国保証(7164)を分析しました。利回り約4%・14期連続増配・営業利益率70%超という超優良企業ですが、PBRは1.7倍で「割安ではない」銘柄でした。
じゃあ逆に、「資産より株価が安い」PBR1倍割れの高配当株はどうなのか。安いなら買いなのか?——実際に数字で採点してみたら、利回り2位の銘柄が総合最下位 という結果になりました。「安いには理由がある」を、データで確かめていきます。
そもそもPBR1倍割れとは?
PBR(株価純資産倍率)は、株価が「1株あたりの純資産」の何倍かを表す指標です。
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)
PBR1倍割れ=株価が会社の純資産を下回っている状態。極端に言えば「会社をいま解散して資産を配ったほうが、株価より多くもらえる」という計算になります。だから「割安のサイン」と言われます。
ただし——ここが肝心なのですが、市場はバカではありません。安く放置されているのには、たいてい理由があります。
なぜPBR1倍割れが起きるのか
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 市況産業 | 鉄鋼・海運・資源など、利益が相場で大きく振れる。好況時の利益が「続かない」と見られる |
| 成長性が低い | 利益は出ているが伸びない。市場は「将来の成長」に値段をつける |
| 資本効率が低い | 資産を抱えているだけでROEが低い |
| 構造的な課題 | 業界そのものが縮小している |
つまり PBR1倍割れ×高配当は、「割安」と「わけあり」が紙一重。だからこそ、PBRの低さだけで飛びつかず、他の指標とセットで見る必要があります。
採点方法:4指標を5点ずつ、20点満点
「安いだけ」の銘柄を弾くために、割安さ(PBR・PER)と健全さ(利回り・配当性向) を組み合わせて採点しました。
| 指標 | 5点 | 4点 | 3点 | 2点 | 1点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 配当利回り | 4%以上 | 3.5%以上 | 3%以上 | — | — |
| PBR | 0.7倍未満 | 0.8倍未満 | 0.9倍未満 | 0.9倍以上 | — |
| 配当性向 | 30%未満 | 40%未満 | 50%未満 | 60%未満 | 60%以上 |
| 予想PER | 10倍未満 | 12倍未満 | 15倍未満 | — | 15倍以上 |
対象:東証上場の主要銘柄から 配当利回り3%以上 × PBR1倍割れ(2026年7月16日終値・会社予想ベース)。
除外:配当性向100%超の銘柄(利益を超えて配当を出している=持続性に疑問があるため)。
PBR1倍割れ×高配当株ランキングTOP11
| 順位 | 銘柄 | 合計 | 利回り | PBR | 予想PER | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 神戸製鋼所(5406) | 19/20 | 4.10% | 0.61倍 | 7.72倍 | 31.6% |
| 2位 | VTホールディングス(7593) | 18/20 | 5.08% | 0.77倍 | 7.84倍 | 39.8% |
| 3位 | 芙蓉総合リース(8424) | 17/20 | 3.95% | 0.78倍 | 8.18倍 | 32.3% |
| 4位 | 商船三井(9104) | 16/20 | 3.71% | 0.66倍 | 11.16倍 | 41.4% |
| 5位 | 日本郵船(9101) | 15/20 | 3.61% | 0.73倍 | 11.52倍 | 41.6% |
| 6位 | かんぽ生命保険(7181) | 15/20 | 3.02% | 0.43倍 | 12.73倍 | 38.4% |
| 7位 | 稲畑産業(8098) | 14/20 | 3.59% | 0.90倍 | 10.12倍 | 36.4% |
| 8位 | INPEX(1605) | 14/20 | 3.15% | 0.82倍 | 11.39倍 | 35.9% |
| 9位 | アルコニックス(3036) | 13/20 | 3.54% | 0.96倍 | 11.56倍 | 41.0% |
| 10位 | SPK(7466) | 13/20 | 3.01% | 0.94倍 | 10.08倍 | 30.3% |
| 11位 | 川崎汽船(9107) | 9/20 | 4.54% | 0.93倍 | 17.59倍 | 79.9% |
上位3銘柄を見る
1位:神戸製鋼所(5406) — 19/20点
PBR0.61倍・PER7.72倍・利回り4.10%・配当性向31.6%。4指標のうち3つで満点という、数字だけ見れば圧巻の成績です。
ただし神戸製鋼は 鉄鋼という典型的な市況産業。鉄鋼市況や原料価格で利益が大きく振れます。PBR0.61倍という安さは、「いまの利益が続くとは市場が見ていない」ことの裏返し でもあります。数字の良さと、事業の振れやすさをセットで理解する必要があります。
2位:VTホールディングス(7593) — 18/20点
利回り5.08%はランキング最高。しかもPER7.84倍・配当性向39.8%と、「利回りが高いのに配当性向は健全」 という珍しいバランスです。
事業は自動車販売(ディーラー)。景気や新車販売の動向に業績が左右されやすい 点、そして 利回り5%超は一般に「警戒ゾーン」 である点は意識したいところ。ただ配当性向は40%を切っており、いまのところ無理をして配当を出している姿ではありません。
3位:芙蓉総合リース(8424) — 17/20点
シリーズで個別分析した銘柄がランクイン。PBR0.78倍・PER8.18倍・利回り3.95%・配当性向32.3% と全方位で高得点です。
ただし分析記事で書いたとおり、この「PER8倍」は2027年3月期のV字回復を織り込んだ数字。2026年3月期は再エネ債権問題で大幅減益でした。割安さは「回復が実現すること」が前提 という点は忘れずに。
今回いちばん面白かったこと:利回り2位が、総合最下位
このランキングで一番伝えたいのがここです。
川崎汽船(9107)は利回り4.54%でランキング2位の高利回り。単純に「利回りが高い順」に並べたら、上位に来る銘柄です。
ところが総合では 9/20点で最下位(11位)。理由は明確でした。
| 指標 | 川崎汽船 | 評価 |
|---|---|---|
| 配当利回り | 4.54% | ◎ 5点 |
| PBR | 0.93倍 | △ 2点 |
| 予想PER | 17.59倍 | ✗ 1点 |
| 配当性向 | 79.9% | ✗ 1点 |
PER約17.6倍=PBR1倍割れなのに、利益に対しては割安ではない(=減益が予想されている)。そして 配当性向79.9%=利益の8割を配当に回している。つまり 「利益が減っているのに、配当を高い水準で維持している」 状態です。
これが続けば、業績次第では減配もありえます。利回り4.54%という数字は、その不安を織り込んだ結果 とも読めるわけです。
📌 利回りランキングの上位=買っていい銘柄、ではない。これは配当利回りランキングの記事でも書いたことですが、今回のように PBR1倍割れという条件を足しても、同じ罠は存在します。
もうひとつの落とし穴:「配当性向100%超」は除外した
今回のランキングでは、配当性向が100%を超える銘柄を最初から除外しています。
配当性向100%超=その年の利益より多くの配当を出している状態。過去の蓄え(内部留保)を取り崩して配当しているので、そのままでは続きません。
実は今回のスクリーニングでも、利回り4%台でPBR1倍割れ、しかし配当性向が100%を大きく超える銘柄 が複数ありました。利回りとPBRだけで並べたら、そういう銘柄が上位に来てしまう。だから除外条件を先に決めておくことが大事です。
「PBRが低くて利回りも高い」——その2つだけで飛びつくと、いちばん危ない銘柄を掴みます。
意外な発見:PBR最安のかんぽ生命は、利回りが「3%ギリギリ」だった
今回もっともPBRが低かったのは、6位に入った かんぽ生命保険(7181)のPBR0.43倍。ランキングの中でも断トツの割安さです。
ただ、かんぽ生命は 予想利回りが3.02%と、ちょうど「3%の境界線上」。実は前日(7/15)の株価では 2.99% で、「高配当株=利回り3%以上」の定義から外れていました。株価がわずかに下がった7/16で ギリギリ3%を超え、対象に入っています。
「利回り3%」という線引きは、株価の日々の動きで簡単に出入りします。かんぽ生命のようにPBRが極端に低い銘柄でも、利回りが基準ギリギリだと「高配当株」に入るかどうかは日によって変わる。数字の"線引き"は思ったより曖昧 だ、ということも覚えておきたいところです。
(なお、PBRが低い=高配当とは限りません。PBRと利回りは別の指標で、両方を高い水準で満たす銘柄は思ったより少ない のです。)
PBR1倍割れ高配当の「顔ぶれ」が語ること
TOP11の顔ぶれを、業種で見てみてください。
- 海運:商船三井・日本郵船・川崎汽船(3社)
- 鉄鋼:神戸製鋼所
- 資源:INPEX
- 保険:かんぽ生命保険
- 商社系:稲畑産業・アルコニックス
多くが「市況や景気で利益が大きく振れる業種」に集中しています。これは偶然ではありません。PBR1倍割れの正体は、「いまの好業績が続くと市場が信じていない」ということ なのです。
だから、PBR1倍割れの高配当株を持つときは——
- 好況時の配当が「基準」ではないと理解する(市況が反転すれば減配もある)
- 1銘柄に集中しない(同じ市況で一斉に下がる)
- 配当性向に余裕があるかを必ず見る(今回の採点で川崎汽船が沈んだ理由)
全国保証(PBR1.7倍)と比べてわかること
前回分析した全国保証(7164)と並べると、対比が鮮明です。
| 全国保証(7164) | 今回のTOP11 | |
|---|---|---|
| PBR | 1.7倍(割安ではない) | 0.61〜0.97倍(割安) |
| 業績 | 15期連続最高益・利益率70%超 | 市況で大きく振れる |
| 連続増配 | 14期連続 | 市況次第で減配も |
| 買う理由 | 質が高いから持つ | 安いから買う |
どちらが正解、という話ではありません。ただ、「自分がどちらのタイプを買っているのか」を意識していないと、判断がブレます。
「安いから買った」銘柄が市況の悪化で減配したときに「裏切られた」と感じるなら、それは 最初から"安さ"ではなく"質"を求めていた のかもしれません。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| PBR1倍割れとは | 株価が純資産を下回る状態。割安のサイン |
| ただし | 安いには理由がある(市況産業・低成長・構造課題) |
| 1位 | 神戸製鋼所(5406) 19/20点(PBR0.61倍・PER7.72倍) |
| 2位 | VTホールディングス(7593) 18/20点(利回り5.08%) |
| 3位 | 芙蓉総合リース(8424) 17/20点(ただし回復前提) |
| 最大の学び | 利回り2位の川崎汽船が総合最下位(性向79.9%・PER約17.6倍) |
| 落とし穴 | 配当性向100%超の銘柄/PBR最安のかんぽ生命は利回りが3%ギリギリ |
| 顔ぶれ | 海運3社・鉄鋼・資源・保険——市況・景気で振れる業種に集中 |
PBR1倍割れの高配当株は、うまくハマれば「割安×高配当」の両取りができます。でもその安さは、市場が「この利益は続かない」と見ている証拠でもある。
利回りとPBRの2つだけで選ぶと、いちばん危ない銘柄を掴みます。今回のように 配当性向とPERを足して採点するだけで、順位はガラリと変わる——それが、5指標で分解して見ることの意味だと思います。
次回も、高配当株を冷静に分析していきます。
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データ出典・基準日
・株価・予想PER・実績PBR・予想配当利回り・1株配当(会社予想):Yahoo!ファイナンス(2026年7月16日終値時点)
・配当性向:予想配当 ÷ 予想EPS(予想EPS=株価÷予想PER)で算出
・スクリーニング条件:東証上場の主要銘柄/予想配当利回り3%以上/実績PBR1倍未満/配当性向100%超は除外
※本ランキングは市場全体を網羅した全数調査ではなく、筆者が抽出した主要銘柄群からの採点結果です。
※本ランキングは上記条件・独自の採点基準にもとづくものであり、銘柄の優劣を保証するものではありません。
※株価・配当利回りは日々変動します。実際の投資判断時には最新の数値をご確認ください。
※本記事は個人の投資記録および情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断は、必ずご自身の責任と判断で行ってください。



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