こんにちは、ちゃぴっとです。
株のニュースでは日経平均が「いくら上がった・下がった」ばかりが注目されますが、私が株価と同じくらい面白いと思っている数字があります。売買代金です。
その日、市場でいくらのお金が動いたか。いわば市場の「体温」や「熱量」を測る数字で、これを長い時間軸で並べると、バブル、暗黒の90年代、アベノミクス、そして今の新NISA・大相場まで、日本株の歴史がまるごと見えてきます。
今日は、東証の売買代金の歴史を1980年代からたどってみます。
そもそも売買代金とは——出来高との違い
まず言葉の整理から。
- 出来高: 売買が成立した「株数」
- 売買代金: 売買が成立した「金額」(株価 × 出来高の合計)
出来高は株数なので、株価100円の銘柄が100万株動いても1億円ですが、株価1万円の銘柄が100万株動けば100億円。市場全体にどれだけのお金が集まっているかを見るなら、売買代金のほうが実態に近い数字になります。
そしてこの売買代金、流動性(売りたいときに売れる・買いたいときに買える度合い)を測る一番シンプルなモノサシでもあります。ここは後半でもう一度触れます。
売買代金でたどる日本株46年
東証一部(2022年からはプライム市場)の「1日平均売買代金」を年ごとに並べたのがこのチャートです。

主な年を表にするとこうなります。
| 年 | 1日平均売買代金 | 何があったか |
|---|---|---|
| 1980年 | 0.12兆円 | まだ「1日1,000億円」の時代 |
| 1989年 | 1.31兆円 | バブルピーク |
| 1992年 | 0.24兆円 | バブル崩壊で熱が消える |
| 2004年 | 1.32兆円 | 15年ぶりに1989年を超える |
| 2007年 | 3.00兆円 | リーマン・ショック前のピーク |
| 2012年 | 1.24兆円 | アベノミクス前夜の閑散相場 |
| 2013年 | 2.61兆円 | 異次元緩和で前年比2.1倍 |
| 2024年 | 5.12兆円 | 新NISA元年 |
| 2026年(1〜8月) | 10.38兆円 | 1日10兆円が当たり前に |
数字の出典はすべて日本取引所グループ(JPX)の公式統計です。では、時代ごとに見ていきます。
1989年: バブルの熱狂——1日1.3兆円
1980年に1日1,200億円ほどだった売買代金は、80年代後半のバブルで一気に10倍化し、1989年に1日平均1.31兆円のピークをつけます。年間では325.8兆円。日経平均が38,915円の史上最高値(当時)をつけた、あの年です。
面白いのは、この時代の取引が人力だったこと。東証にはまだ「立会場」があり、「場立ち」と呼ばれる証券会社の担当者が手サインで注文をさばいていました。あの熱狂は、文字どおり人の熱気でできていたわけです。
このあたりの株価の歴史は、こちらの記事で詳しく書きました。
バブル最高値38,915円から史上最高値72,366円へ——日経平均37年の推移
1992年: 熱が消えた——ピークの2割以下へ
バブルが崩壊すると、売買代金は株価以上に急激にしぼみます。1992年は1日平均0.24兆円。ピークだった3年前の2割以下です。
株価が下がると、持っている人は「損したまま売りたくない」と動かなくなり、買いたい人も減る。市場からお金と参加者が同時にいなくなる——売買代金の急減は、それを何より雄弁に物語っています。
そして意外と知られていないのですが、1989年の売買代金の水準は、その後15年間も超えられませんでした。再び1日1.3兆円台に戻るのは2004年。「失われた◯十年」という言葉は株価について使われますが、市場の熱量も同じだけ失われていたんですね。
ちなみにこの間の1999年4月30日、東証の立会場は閉場し、約120年続いた場立ちの時代が終わって全取引がシステム化されました。市場が静かだった時代に、市場の姿も静かに変わっていました。
2007年: 小泉相場〜リーマン前——初の3兆円
2000年代に入ると、ネット証券の普及もあって個人投資家が戻り、外国人投資家の売買も拡大。2007年には1日平均3.0兆円と、バブル期の2倍を超える水準まで熱が戻ります。
ただしその直後、リーマン・ショックで再び急減速。2009〜2012年は1.2〜1.5兆円台と、ピークの半分以下の「凪」が続きます。私はこの頃まだ投資をしていませんでしたが、2012年の日本株は「何をやっても動かない市場」と言われていたそうです。
2013年: アベノミクス——1年で2.1倍
その凪を破ったのがアベノミクスと日銀の異次元緩和です。2012年に1.24兆円だった1日平均売買代金は、2013年に2.61兆円と一気に2.1倍。年間では306.7兆円→640.2兆円です。この年、日経平均は56.7%上昇と41年ぶりの伸びを記録しました。
この主役は外国人投資家でした。異次元緩和以降、東証の売買に占める外国人の比率は7割程度まで高まり、「日本株の売買の主役は外国人」という構図がここで固まります。
2024年〜2026年: 新NISAと大相場——ついに1日10兆円へ
そして現在です。2023年の東証の市場改革(PBR改善要請)、2024年の新NISA開始、企業の最高益更新が重なり、売買代金は段階を上げていきます。
- 2023年: 3.84兆円
- 2024年: 5.12兆円(新NISA元年)
- 2025年: 5.84兆円
- 2026年(1〜8月): 10.38兆円
2026年は上期だけで売買代金の累計が初めて1,000兆円を超えました。バブルの1989年が1年で325.8兆円だったことを思うと、今の市場は8ヶ月でその5倍のお金が動いている計算です。1日平均で見れば、バブルピークの約8倍。「市場の熱量」という意味では、日本株は今、史上最も熱い時代にいます。
もっとも、1989年と単純比較はできません。株価の水準も上場企業の規模も違いますし、今の売買の相当部分は高速の機械取引です。それでも「動くお金が桁違いに増えた」こと自体は、まぎれもない事実です。
ちなみにこの間、日銀は利上げを6回進めていますが、それでも市場の熱は冷めていません。金利と株の関係は、前回の記事で書きました。
金利が上がると株はどうなる?——日銀1.25%時代に日本株とどう付き合うか
高配当株の長期投資家として——流動性は味方だと思う
ここからは私の目線です。売買代金が多い市場は、短期トレーダーだけでなく、私のような「買って持ち続ける」投資家にとってもありがたいと思っています。理由は2つ。
1つ目は、売りたいときに適正な値段で売れること。長期保有といっても、いつかは使うために売る日が来ます(配当をもらい続けて売らない選択肢もありますが)。売買が薄い市場では、売り注文そのもので値段が崩れたり、買い手が現れるまで待たされたりします。1日10兆円が動く市場なら、その心配はほぼありません。
2つ目は、株価が「価値」を映しやすくなること。参加者が多くお金が多く動くほど、企業の業績や配当がきちんと株価に織り込まれやすくなります。閑散とした市場では、良い会社の株が誰にも気づかれず放置されることがある。実際、東証改革の前は「万年割安」と言われる銘柄がたくさんありました。
逆に言うと、1990年代のような「熱が消えた市場」では、長期投資家すら報われにくかった。私が今、高配当株の長期保有とインデックス積立を安心して続けられているのは、この歴史の中でたまたま「熱のある市場」に居合わせているからでもあります。そこは幸運だと自覚しつつ、熱狂そのものには乗らず、淡々と続けたいと思っています。
まとめ——売買代金の歴史、3つの学び
- 売買代金は市場の「体温計」。株価より正直に、市場にお金と人が集まっているかを教えてくれる
- バブル期1.3兆円→92年0.24兆円→2013年に2.1倍→2026年は10兆円超。1989年の水準を超えるのに15年かかった一方、直近3年で熱量は倍増した
- 流動性は長期投資家の味方。売りたいときに売れて、価値が価格に反映されやすい市場は、「持ち続ける」投資の土台になる
日経平均の高値更新のニュースの裏で、売買代金という「熱量」も史上最高の水準にある——次にニュースを見るとき、この数字にも少しだけ注目してみてください。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
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